お小遣い

 私には毎月決まった金額を親からもらう『お小遣い』の記憶がありません。姉や妹がどうしていたかわかりませんが、それくらい興味がないものでした。何事もなく親からお金をもらうことに違和感や申し訳無さを感じていたのかも知れません。必要なものは揃えてもらっていましたし習い事やリトルリーグにも通わせてもらっていたので、それ以上のことには後ろめたさがあったのかも知れません。

 しかしながらお金をもらう機会がなかったわけではありません。家業の果物店を手伝った時にお駄賃としてもらうことがありました。当時の店先にはザルやボウルが天井からぶら下がっており売上や釣銭が入っていました。店仕舞いでそれらを店奥に引き上げ父に預けた際、たまにそこから数百円くれるのです。その中に新しく発行された500円玉が混じることがあり、珍しさを喜んだことを覚えています。稀に千円札をくれました。

 2~3時間の手伝いに対してなので決してアルバイト代並ではありません。家業なのでアルバイトとも思っていませんでした。それでもよく手伝っていたので買い食いや漫画を買うには十分でした。お金をもらうようになったのは中学に入った頃からだったように思います。今思えば万引きをしないようにと親が考えていたのかも知れません。全国的にみても中学生の非行が多い地域であったし、万引き現場を見たり捕まった友人の話を聞くこともありました。一言で『そんな時代』でもありました。

 家業手伝いが労働といえるかや金額の大小はともかく、仕事をしてこそお金をもらうという感覚が身についたのは私にとっては良かったと思います。おかげで大きなトラブルに巻き込まれなかったのかも知れません。お小遣いを通して非行防止や仕事の価値観を親が伝えようとしていたならアッパレです。感謝しかありません。

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