介護と仕事

 先日、前々職で一緒だった先輩の会社を訪ねました。この先輩とは年に数回ゴルフをするなど退職後も関係が続いています。独身ですが2世帯住宅を建てられご両親と暮らしています。お酒とタバコが大好きで曲がったことが大嫌いという感じで、私が新入社員の頃はいかつく怖い存在でした。後輩に対して厳しかったですが、それ以上に自分に厳しい方でした。

 訪問の調整をメールでやり取りするうちに今年15日の有給休暇を取得したと知りました。年齢を重ねても気力もスタミナもありバリバリ働く象徴のような先輩でしたので大変驚きました。お聞きするとご両親の介護のためで、お父様が要介護2、お母様が要介護1に加え、今年は骨折や病気が重なり本当に大変とのことでした。ご両親の意向もあり介護ヘルパーなどの外部支援は受けずお一人で対応されているようです。お会いした時には大変お疲れの様子で、「周りに助けてもらいながら・・」と力なく話す姿を見るといたたまれない気持ちになりました。

 知識として介護と仕事の両立が大変なことは理解していましたが、長きにわたってその人となりを知りながら両立のために変わらざるを得なくなった先輩の姿を目の当たりにすると知識とは違った重みの理解がありました。私自身も実家の両親が心配になる時期に来ているので尚更なのかも知れません。

 私は昨年コンサルティングで起業し企業と人の支援を始めました。カウンセリングにおいて『ロジャーズの理論』ではクライアントが変化を起こす条件として『受容』『共感』『一致』が示されています。支援者の悩みや困難がより深く理解できるよう知識と共に経験やコミュニケーションを積み重ねていきたいと思います。

家庭教師4

 大学時代にアルバイトで家庭教師をしていました。今回は最後となる4件目の家庭について書きたいと思います。県内トップクラスの公立進学校の高校3年男子でした。4月から12月までの9カ月の短い期間、理系の数学だけを教えました。一人っ子で親の期待は相当なもので教え子本人もそれを感じていたようでした。また進学校内で周りとの差に悩んでいたのか何か焦燥感や悲壮感のようなものが感じられました。

 進学校ということもあり基礎学力はある十分あるようでしたが点数や順位に繋がらないのか問題を解くテクニックを求めていました。したがって指導内容は問題の捉え方やパターンの見つけ方など短期間で点数に直結する内容が多かったです。

 知識や理解を深めたいという欲求に知的好奇心という言葉があります。テクニック習得にもまた好奇心が必要な気がします。この場合は新しい情報を幅広く求める拡散的知的好奇心があてはまるように思います。私が受験勉強をしていた時にも学習塾で習った解答が芸術的にみえて「かっこいい、ものにしたい!」といった感情がありました。たぶんこのおかげで習得が進んだのでしょう。勉強から離れた今でも数学の芸術的な一面に惹かれています。

 教え子にはそんなことを思う余裕はなかったようです。ひたすらにテクニックを暗記しようとしていました。食欲もないのに食べ物を無理やり詰め込もうとしているようで気の毒にも思いました。残念ながら当時は数学の魅力や美しさを伝える発想も時間もありませんでしたが、職業意識を持って振り返るとテクニックを身に付けたいと要求されたならまずその土台となる好奇心を引き出すことをすべきだったかな、と思います。少し悔いの残る家庭教師先となりました。