ビジネスや職位、階級のある組織では「やりたいことがあるなら偉くなれ」と言われることがあります。ドラマ『踊る大捜査線』でもベテラン刑事の和久(いかりや長介)が青島(織田裕二)に「正しいことをしたければ偉くなれ」と言っています。ここでは『正しいこと』となっていますが、このやり取りには「自分のやりたいようにやりていか?」「はい。自分の信じるままに」とあったりするので『やりたいこと』と同じように思います。
私は職位のある現場にいましたので「やりたいことことがあるなら偉くなれ」には共感できる部分があります。実際に係長、課長、部長と昇格するに連れて自身が判断する領域が大きくなります。血気盛んなころは生意気にも先輩や上司に「絶対こうすべきです!」「なんでやらないんですか!?」と迫ったこともあります。昇格したての時期は「ようやく俺の時代が来た」とイキがっていたように思います。今は若気の至りだったと反省していますが、このようなエネルギーもまた会社や自身の成長に作用したと思っています。
一方、どこまで偉くなってもやりたいことをやれないジレンマは尽きないようにも感じました。ある職位に就くと初めのうちは「やっとやれるようになった」と思うのですが、続けているうちにさらに大きなことにチャレンジしたくなりまた「なんで!?」となります。これも成長のプロセスと思いますが、重ねているうちに「このジレンマには終わりがないのでは・・?」と思うようになりました。そう思いながら上司やトップマネジメントをみると「日頃厳しいこと言うけど、この方々もジレンマ抱えているんだろうなぁ」と思え、「お前の言うことは正しい、でも今取り組めないんだ」と言いたくても言えなかった先輩や上司にはたいへん申し訳なく思います。思慮が足りませんでした。
さて現在の私がどうかというと、サラリーマンを辞め個人事業主となったことでこのジレンマからは解放されています。かといって晴々しい気持ちかと言えばそうでもなく、やりたいことやってダメなら食べていけないわけでプレッシャーは増しています。「やりたいようにやればいいさ、うまくいくならね」と冷ややかに言われているような感じです。それでもやりたいことに近づくことに充実感を得ています。
私のキャリアを振り返ると「やりたいことがあるなら偉くなれ」は正しい。だけど偉くなるなるだけが方策ではないということになります。大切なことは『やりたいこと』が何なのかに向き合うことのように思いました。どんな些細なことであってもいいので『やりたいこと』が見つかる、持っていることは活力になるように思いました。
多くの人が『やりたいこと』があり、それをなす能力を身に着け、それを求める社会があれば素敵なことだと思います。ビジネスコンサルタント、キャリアコンサルタントとして少しでもその機会にかかわれたらハッピーです。